無駄のない物流システムを目指して!SCM(サプライチェーンマネジメント)の仕組み

商品を生産・販売する企業にとって物流コストの削減は常に大きな課題として存在しています。物流コストが肥大化すればそれだけ利益を圧迫することになるからです。しかし、物流という大きな流れの中でひとつの企業が単体でコスト削減に取り組んでも限界があります。そこで、物流に関わる一連の企業が協力し合って無駄のない仕組みを作ろうというSCM(サプライチェーンマネジメント)の考え方が注目されるようになったのです。具体的にそれがどのようなものなのか、詳しく解説していきます。

■SCMの意味とそれを支える4つのシステム

SCMとはSupply Chain Managementの略で直訳すると「供給連鎖管理」となります。つまり、原料の調達から小売り販売までの供給の流れを一元管理することでコストの無駄を削減しようという考え方です。しかし、そのためには工場、物流センター、営業所などの在庫状況や輸送能力などを把握し、最適化された生産計画や出荷計画などを立案実行していかなければなりません。それを可能とし、SCMという経営管理手法を支えているのがSCP(サプライチェーンプランニング)、SCE(サプライチェーンエクスキューション)、ロジスティクス実務、ERP(パッケージ)の4つのシステムです。それぞれの役割を大まかに言うと、ERPが財務や在庫などの現状を把握・管理し、SCPがそれに基づいて計画を立案、その計画が滞りなく行われるようにSCEが管理し、ロジスティクス実務がSCEのサポートを受けながら実際の作業を行うといったイメージになります。

■SCMの中心的役割を果たすSCP(サプライチェーンプランニング)

SCP(サプライチェーンプランニング)はSCMの中核を担うソフトウェアです。その主な機能には商品の需要予測、生産計画、在庫計画、物流計画などがあります。特に、需要予測は在庫数や生産数を決める基礎データとなり、小売店、卸店、メーカーなどの利益を大きく左右する重要な要素です。SCPはこの予測数値を小売店のPOSシステムが収集した販売実績データや前年同期比データなどを用いて導き出します。ここでいかに正確な予測をするかによって、その後立案される生産計画、在庫計画、物流計画などの妥当性も決まってきます。そして、妥当な計画を立てることが生産時間の短縮、在庫削減、商機喪失の予防などにつながり、より大きな利益を生むというわけです。いくら他の要素が完璧であっても、SCPによる予測がいい加減なものであればSCMによる高い効果は望めません。したがって、SCMを導入する際には、まずSCPを使いこなせるか否かが大きな焦点となります。

■SCPの計画を実行・管理するSCE(サプライチェーンエクスキューション)

SCE(サプライチェーンエクスキューション)はSCPが作成した計画が滞りなく行われているかを管理し、必要に応じてそのバックアップをするのが主な役割です。そのため、SCPを計画系と呼ぶのに対して、SCEを実行系と呼称することがあります。具体的な機能としては、現在の在庫データを確認したり、特定の荷物が現在どこにあるのかを特定したりなどといったことが挙げられます。その他にも、オーダー、出庫、補充、返品などの物流に関するあらゆる動きはSCEを通して把握・管理しているのです。現場をサポートするロジスティクス実務を情報面で支えているといった見方も可能でしょう。また、SCEソフトはインターネットや電子データ交換などを介してしばしばSCPソフトやERPなどとリアルタイムで連携を図ります。そして、需要の変動や生産計画の変更等に対しても素早く対応できるようになっているのです。

■SCMの実働部隊とも言えるロジスティクス実務

ロジスティクス実務は倉庫や物流センターなどの仕事の管理や調整を行いつつ、実際の作業も行っています。例えば、入荷、保管、補充、仕分けなどを専門のノウハウを用いて行うことがそれに当たります。つまり、SCPの計画を実際に形にする実動部隊とも言える存在です。ちなみに、物流の仕事を代行する3PL(サードパーティー・ロジスティクス)は荷主企業に対して、SCEとロジスティクス実務を提供するサービスであると定義づけることも可能です。また、スマート・ロジスティクスという言葉もありますが、これは最新技術を用いて倉庫や物流センターなどの作業を効率化させていく考え方のことを指します。いわば、ロジスティクス実務による効率化をハイテクによって実現しようというものです。

■リアルタイムの情報提供でSCPの計画立案を補強するERP(パッケージ)

ERP(パッケージ)は「販売管理」、「在庫管理」、「会計管理」などを行う基幹システムであり、企業における効率的な業務プロセスを実現するためにはなくてはならない存在です。そのため、ERPを単体で活用している企業も多く、必ずしもSCM特有のシステムというわけではありません。しかし、ERPには企業資源を可視化できるというメリットがあります。会計、販売、在庫、人事といった情報が常に収集され、その変化をリアルタイムで表示してくれるのです。したがって、これをSCPと連動させることで現状に適した計画の立案が可能となります。逆に言えば、物流にかかわる多くの企業が協力し合ってSCMを推進していくためには、まずERPを導入して自社資源の一元化を図る必要があるとも言えます。いずれにしても、SCPとERPの連動をいかに最適化していくかがSCM成功の大きな鍵となるでしょう。

■SCM導入の前に解決すべき課題

SCMは物流問題の解消が期待できる素晴らしい管理手法ですが、実際に導入・運用してみると思わぬ問題が浮き彫りになるケースも少なくありません。例えば、SCMというだけでありがたがって導入したところ、それは組立て・加工業者向けのシステムであり、印刷業である自社にはマッチしなかったなどという例があります。また、SCMさえ導入すれば生産量や在庫量の最適化が自動的に行えると考え、企業間の利益調整をおろそかにしていたというのもよくある失敗例です。ビジネスは人同士が行うものであり、いくら便利なシステムを導入しても人がかかわる過程を省いてしまってはうまくいくはずがありません。さらには、SCMのシステムを導入したものの、誰もその扱い方を理解していなくて宝の持ち腐れとなった例も数多くあります。したがって、SCM導入を検討する際には、まずシステムそのものをよく理解した上で導入のための課題は何かをはっきりさせ、その解消を図ることが大切です。

[監修]

 坂上 哲也、(経営コンサルタント)

建築士として起業後、インターネット日本上陸を機にIT導入支援コンサルティング会社設立。インターネット黎明期よりSEOやアクセス解析を始めとするWebマーケティングに取組み、独自の経営視点も併せ中小企業および店舗のための勝てるウェブ戦略立案が主業務。

保有資格:二級建築士、ウェブ解析士マスター、情報セキュリティ管理士